ワークショップの始め方
まず、事前に確認した情報から参加者の関係性や雰囲気について推測します。職場を対象とする場合、参加者間に上下関係や利害関係があることもあります。肩書はずしルールやグループ構成の工夫などにより、できるだけフラットな状態でワークショップを始められるようにしましょう。参加者に合わせた事前案内や当日の雰囲気づくりも考えます。
希望参加の場合はもちろんですが、そうでなくても、参加者への事前案内も大切です。タイトルなどを工夫して、参加者に適切な認識と期待を持ってもらうことは、スムーズな参加につながります。
安心でリラックスできる場にするために実は重要なのが、当日の開始前の時間の使い方だと思います。開始時間前に少しずつ集まってきた参加者は、手持無沙汰にスマホをいじったり、少し気まずい感じになったりします。この時間に雰囲気をほぐして和やかにしておくことは、お決まりのアイスブレイクよりむしろ効果的ではないでしょうか。そのための、BGM、お菓子、質問や雑談なども準備しておくとよいでしょう。また、この時間は、ファシリテーターが参加者の特徴や関係性について、それとなく確認できる機会でもあります。
逆に開始時間に間に合わない遅刻者への対応も想定しておく必要があります。最初の説明を聞けなかった人への、別スタッフや資料などでのフォロー、最初のアイスブレイクなどは途中参加もできるようにしておく、どのくらいの遅刻まで参加可能とするかの告知など、予め準備してくと安心です。
ワークショップの組み立て
一つのワークショップは通常、複数のワーク(アクティビティ)の連続によって構成されます。
どのようなワークをどういう順番で行うかを考え、ワークショップを組み立てます。事前に関係者間で合意した目標を出発点として、それを実現するための最適なメインワーク、そこにつながる前段のワークやアイスブレイクというように、目標から逆算して考えていくと、目的からのズレを防ぎやすくなります。この時、参加者や場の変化を想像しながら組み立てていくことで、最初の状態から目標とする状態へ無理なくステップアップしていく、自然な流れを作りやすいかと思います。
チームビルディングのためのワーク
目標が、「声をかけやすくなる」「質問や相談ができる」などであれば、その人を知るための会話を沢山できるようなワークが良いでしょう。例えば他己紹介やヒーローインタビューなどが考えられます。それらを前段として、さらに大人数でチーム全体の共感性を高めるような目標であれば、ワールドカフェでチームのテーマにつながるような対話を繰り返すなども考えられます。ペーパータワーなどの協働性を多く伴うもので一体感醸成を狙う場合もあるでしょう。
関係性構築のワークにつながるアイスブレイク
次に、事前情報から推測した開始時点での参加者の雰囲気から、メインワークやその前段のワークに参加者が自然に入ってけるような状態を作る、アイスブレイクなどを考えます。例えば、まずは4マス自己紹介でどんな人かを簡単に共有するとか、ランダムに歩きながら出会った人と一言会話することで、少し口を軽くしておくなどが考えられます。特に関係性構築目的の場合はアイスブレイクは丁寧に行う方がよいでしょう。
なお、ワークの内容を考える際に、事前に確認した場所の制約、特に机や椅子などのレイアウトの自由度は考慮する必要があります。また、職場の場合、会議室などが会場になることが多いと思いますが、いつもの仕事の雰囲気から変える一工夫もあったほうが良いかもしれません。
確認と調整のポイント
実際にワークショップが始まると、プログラムデザイン時の想定からは様々なズレが生じます。ワークショップはナマモノなどと言われる所以です。対応するには臨機応変にファシリテーションしながら、プログラム自体を柔軟に変更する必要もあります。熟達したファシリテーターなら、豊富な経験からその場その場で対応することもできるかもしれません。しかし、予めプログラムデザイン時に、ズレを確認するポイントと変更の選択肢を用意しておくほうが安心でしょう。
時間が足りなくなったり余ったりとういことは往々にして起こりますので、カットする内容の優先順位や追加で行う予備の内容などを考えておきましょう。
時間だけでなく、参加者の様子も観察するポイントと、その結果に対する、内容,進め方,声掛けなどによる調整などについても、事前に考えておくとよいでしょう。
ワークショップの終わり方
メインワークの後、ワークショップの最後にリフレクションを行うことも大切です。この時間に経験したことを振り返る内省や言語化などを行うことで、自分の中で気づきが定着していきます。このケースであれば、この人と今度こんな話をしてみようという、少し具体的な想像をしてもらうのもよいかもしれません。
トライアルによる確認とブラッシュアップ
頭の中や紙の上で考えただけでは、必ず見落としや勘違いが発生します。トライアル(試行)として、考えたプログラムを一通り行って確認することをおすすめします。本番の参加者に近い属性の人に参加してもらえれば理想的ですが、開催関係者の中でまずは試してみるのも良いでしょう。その結果として、やりずらかったところ,違和感があったところ,目標の達成程度など、トライアル参加者からのフィードバックをもらって、プログラムをブラッシュアップしていきます。